この記事のまとめ
B型肝炎のワクチンを3回打ったのに抗体がつかない
B型肝炎ウイルス(HBV)は感染力が非常に強く、HBVに感染するとそのうち一部が劇症肝炎を発症します。また劇症肝炎を発症しない場合でも、慢性肝炎、肝硬変、肝がんのリスクが高まる危険な病気です。また、一度慢性肝炎を発症すると、免疫抑制剤やステロイドなど一部の薬剤を服用できない可能性が高まり、その後何らかの病気にかかった際の治療が難しくなる可能性もあります。B型肝炎は血液等の体液を介して感染するため、医療従事者や保育関係者などはその抗体の獲得が求められます。しかし、成人者の1-2割程度、B型肝炎ワクチンを3回打っても抗体がつかないケースがあるとされています。
対応策として、
・接種方法(筋肉内注射・皮下注射)の変更
・接種量の増量
・追加接種
などが挙げられますが、これらの施策を行っても抗体を得られない場合も多々あります。
B肝の抗体を得るには?
B型肝炎ワクチンの種類を変更することにより抗体を得ることができる可能性があります。実際にビームゲンを2シリーズ(6回)の接種で抗体の獲得ができなかったにも関わらず、種類の異なるB型肝炎ワクチンの接種により抗体の獲得ができたケースが多々あります。現在国内で主に用いられているのは「ビームゲン」という酵母由来のワクチンです。こちらは若年者には免疫が付きやすいですが30歳以上には免疫が付きづらく、3割程度が免疫獲得に至りません。
当院では「エンジェリックス(engerix)」と「へプリサブ(heplisav-b)」という輸入ワクチンを取り扱っています。これらのワクチンを打つことにより、ビームゲンで抗体を獲得できなかった方でもB型肝炎ウイルスに対する抗体を獲得できる可能性が高まります。
・エンジェリックス
国内で用いられるビームゲンは抗原量が10 μgなのに対し、エンジェリックスは20 μgと倍量のB型肝炎抗原が含まれているため、より強力に免疫反応を起こします。海外でも幅広く用いられており、渡航先で2、3回目接種をご予定の場合もスムーズに同種のワクチンで残りの接種をいただけます。
・へプリサブ(heplisav-b)
新しいB型肝炎ワクチンであるへプリサブ(heplisav-b)はCpGアジュバンドという新しい成分を含有しており、エンジェリックスよりもさらに高い有効性が確認されています。特に糖尿病患者や年齢の高いかたねどなど抗体獲得率の低い集団に対しても圧倒的に高い抗体獲得率を示しました。
その他のB型肝炎ワクチンが6ヶ月以上接種にかかるのに対し、1ヶ月で完了するため、実習や出張、留学までに急いで抗体をつけたいという方にもおすすめです。
わずか1回の接種でも2割程度の方は免疫獲得に至ります。
B型肝炎の抗体を最短で
実習や出張、留学に間に合わせるために
一般的にはB型肝炎ワクチンは接種完了までに6ヶ月もの期間が必要であり、抗体価が上昇するまでの間、B型肝炎に無防備な状態が継続してしまいます。
急いでいる方、もしくは国産ワクチンで免疫がつかなかった方には「heplisav-b」の接種をお勧めしております。
当院では当日の予約、接種も受け付けております。お急ぎの方もぜひご利用ください。
Heplisav-bで免疫が獲得されやすい詳しい説明
heplisav-bは細菌のふりをCpGという上手い構造を利用することでより確実な免疫を獲得させます。
ビームゲンやヘプタバックといった国内でよく用いられるB型肝炎のワクチンは、免疫細胞を刺激して抗体を誘導するために水酸化アルミニウムや硫酸アルミニウムなどの非生物学的な添加物(アジュバンド)が追加されています。
しかしこれら伝統的な非生物学的なアジュバンドはワクチンは感染防御で最も重要な働きを示すT細胞による細胞性免疫を誘導できず、B細胞による抗体を介した免疫だけを誘導します。
これはアルミニウム塩が接種された場所を無分別に刺激して炎症を発生させることで、免疫を認識させる細胞にワクチン内の抗原を認識させることによります。
一方heplisav-bはウイルスや細菌が持っているDNAの構造を模したCpG1018という構造を添加することで、自然免疫系がもっているTLR9を刺激します。
すると自然免疫系はheplisav-bを感染してきた細菌だと勘違いして、T細胞を活性化させて学習させに行きます。活性化したT細胞はB細胞による抗体を介した免疫も作らせます。
つまりheplisav-bでは通常のワクチンによって得られる抗体による免疫だけではなく、T細胞を中心とした細胞性免疫すらもつくのです。
参考
https://www.drugs.com/medical-answers/difference-between-heplisav-engerix-3370953/